医療ニュースハック

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アステラス製薬の将来性は?後発品、ジェネリックの影響と新薬計画

2015年5月27日にアステラス製薬経営計画2015-2017が発表された。

アステラスの将来ビジョン、特許満了に伴う影響、新薬の展望を考察していきたい。

 

アステラスはこれからも明日を照らせるのか

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2014年の10月武田薬品工業を株式時価総額で追い抜き、医薬品業界において株式時価総額ではトップとなったことは記憶に新しい。

 一見、非常に好調に見える医薬品メーカーだが、実は同時期に早期退職を募っているなどした、経営の効率化にも望んでいた。

 

特許満了に伴う、ジェネリックによる大打撃

 これだけ後発品が出てくると、最大手メーカーであるアステラスの豊富なラインナップでは影響は大きかった。プログラフ・タクロリムス・ハルナールといった稼ぎ頭がジェネリックメーカーによって食われていき、2010年には大幅な減収となったが、国内の状況がこう一変してしまった現在、今後も大きな減収が見込まれる

 

2020年までに特許が切れる主力製品

 今後、特許満了が控えている製品としてアステラス製薬の各製品の売上高から見ても主力製品である、過活動膀胱治療剤「ベシケア」をはじめとする製品が17年〜20年に特許が切れる予定であり、2020年までは非常に厳しいと言わざるを得ない。

 骨粗鬆病薬「ボノテオ」、気管支喘息治療剤「シムビコート」、ARB降圧剤「ミカルディス」、鎮痛薬「セレコックス」、また抗がん薬「タルセバ」、抗菌薬「ファンガード/マイミカン」等が2020年までに特許が切れ、ジェネリックに食われることが予測されている。

 

 現状の政治体制では今よりも更に後発品比率を高める政策となる事は必須であり、これら製品の減収による減益は避けられない

 

今後の経営目標、ビジョンは?

 2015年までの経営計画によると、ジェネリッックへの参戦等の記載は経営計画になかった為、新薬創出とその価値の最大化に重きをおいた従来の経営方針へのブレが無いと言える。ここが非常にカッコいい点である。

 

 ベタニスやスーグラ等の成長品の価値の最大化を唱えつつ(これは当たり前である。しかし、SGLT2...)、今後の新薬についても言及している。

 

新薬創出メーカーとしての期待できる製品群

 新薬の創出についてもふれられていた。

既存疾患領域として「泌尿器」「 がん」「 免疫科学」 「腎疾患」「 神経科学」に取り組むとしながらも、新疾患領域として「 筋疾患」「 眼科」へと幅を広げた新薬の創出に取り組むとした計画である。

 またこれらは導出の可能性もあり、発売は別かも知れない。

 

OABに対する強いこだわり

 「腹圧性尿失禁」、「低活動膀胱」、「夜間他尿」と今後の製品群として、アンテッドメディカルニーズに対応した製品群を整えている一方、EB178が過活動膀胱で第3相実施中と、ベシケアの落ち込みをカバーする製品を構えている。さすがである。

 また、現在のベシケア/ベタニスの最大価値の創出からこれらの製品群を取り揃えることにより、泌尿器関連薬には強いアステラスはこのままより突き進むであろうと考えられる。ただし新薬であるから、これからの開発の結果次第ではあるのは言うまでもない。

 

がん領域では競争優位性を保てるか

 エンザルタミド(イクスタンジ)の早期前立腺がんでの適応を控えている。これがどれほどの売り上げ貢献に繋がるかが鍵であろう。

 また急性骨髄性白血病治療剤のASP2215の開発を進め、FLT3/AXL阻害剤としての最速上市を目指すとしている。

 がん領域においては特に、開発力には定評のあるアステラスがどの位スピード感を持った他社よりも早い上市を図れるかが、後発品の挽回、また余りある成長に繋がることになることはいうまでもない。

 

免疫領域では、面白い製剤が控えている

 関節リウマチを適応としたASP015Kをはじめとして、大きい市場へ挑戦する新薬が控えている。

 特に注目したいのはスギ花粉症の根本治療ワクチン(ASP4070/ JRC2-LAMP-vax)の開発である。もし仮に著効率が低くても、市場規模はあまりに大きい。ただ、あまり記載が無いことから、効果や売り上げに関しては推測すら出来ない。

 免疫群では、今後爆発的な売り上げを記録しそうな疾病に対しての挑戦が伺え、非常に期待出来る。

 

腎臓・神経はまずロキサデュスタット

 経口赤血球増多剤のロキサデュスタットが一番手の上市になるかが大きなポイントになるとしている。SGLT2阻害薬の各社発売を見ても思うが、やはり一番手とそのフォロワーでは、売り上げで大きな差になる事は確実であろうから、この製品も開発の力が特に売り上げに大きな影響を与える領域であろう。

 またアンメットニーズの高い精神・神経疾患、疼痛への新規メカニズム治療薬とされる、神経障害性疼痛治療薬(ASP8477, ASP3662) 、変形性関節症による疼痛・慢性腰痛治療薬(ASP7962) • 統合失調症に伴う認知機能障害治療薬(ASP4345)も控えている。(これらはPOC未取得の第1~2相群)

 

高い研究・開発力がどこまでカバー出来るか?将来性は「ある」

 2020年までに80%へと引き上げられる可能性が高い、長期収載品の後発品割合であるが、この2020年までに多くの主力製品が後発品への移行するアステラスの製品群。

 特に、特許切れ直後はこぞって後発品メーカーの営業が活発となり、切り替えられる恐れも多い為、大ダメージになることは必須である。

 ベタニス・スーグラ・イクスタンジの売り上げの更なる向上と、発売までのスピードアップによって、カバー、また収益を上げる事が出来るかが大きな転換点となることは明確である。

 

 畑中社長によると、発売を控えているそれぞれの製品の売り上げピーク時の予想は「3000億円規模」と、この特許満了の波を乗り越えられると発表している。

 後発品がこれほど控えているアステラス製薬であるが、開発中のラインナップからも成長を見込めるのではないかと私は思っている。今後のアステラスの動向に注目、また期待したい。

(出典:https://www.astellas.com/jp/corporate/news/pdf/20150527_Jp.pdf